全身疾患にも関係する、
歯周病の危険性について Risk of periodontal disease
歯周病とは、口内の食べかすをもとに増えた歯周病菌が毒素を出し、歯肉が炎症を起こしてしまう病気です。進行すると歯肉の下にある歯根膜や歯槽骨などの歯周組織をも損傷させ、最終的には抜歯へと至ります。さらなるリスクとして、歯周病細菌から分泌される毒素や炎症反応性物質などが、炎症によってダメージを受けた歯肉から体内へ入り込むことが挙げられます。それらの物質は血流に乗って全身をめぐり、身体の様々な組織へ悪影響を及ぼしていくのです。
具体的な例としては、糖尿病、動脈硬化、心臓病、呼吸器疾患、早期低体重児出産、早産、アルツハイマー型認知症などです。口腔内だけでなく全身の健康にも影響を及ぼす可能性があるからこそ、定期的な歯科健診と適切なケアが必要です。歯科医師や歯科衛生士の協力を通じて、歯周病のリスクを軽減し、全身の健康もしっかりと管理しましょう。
歯周病の進行度 Progression
軽度の歯周炎
歯肉や歯根膜に歯周病菌が影響を及ぼし始め、進行すると歯槽骨にも悪影響を及ぼす可能性がある歯周病の初期段階です。具体的には、軽度の歯周炎では歯槽骨が歯の根の約3分の1まで溶けた状態で、歯周ポケットが最大で4mmまで深くなります。
症状としては、歯茎の赤みや腫れが強まり、歯磨き時の出血頻度が増えてきます。歯茎が引いて、歯が長く見える現象も見られることから、鏡でお口の中を確認すると、歯周病の発症に気付ける可能性が高まります。中等度の歯周炎
中等度の歯周炎は、炎症によって歯の根の約半分まで歯槽骨が溶けた状態を指します。この段階では歯周ポケットの深さが約6mm程度に達し、歯茎が後退し、歯の根が露出し始めます。主な症状は、歯茎の変色や出血、口臭の悪化、冷たいものや熱いものがしみる、歯が浮いているような感覚がある、歯がぐらぐらと揺れてきたなどです。
これらの症状が現れた場合、歯周炎が進行している可能性が高いため、できるだけ早期の歯科医師の診察と治療が望まれます。重度の歯周炎
重度の歯周病は、歯槽骨の大部分(歯根の約3分の2の高さ)が溶けてしまっている状態です。歯周ポケットの深さは通常6mm以上に達し、歯茎が大きく後退して歯が伸びたように見えます。症状としては、硬い食べ物を噛むことが難しくなる、歯がぐらぐらと揺れる、口臭が悪化する、口内の膿によるえぐみを感じる、出血が多くなるなどです。
さらに、歯周病が酷くなると、顎の骨まで影響を及ぼし、歯を失う可能性が高まります。歯周病の進行を放置すると、最終的に歯の抜歯を余儀なくされることもあるため、できるだけ早く歯科医師へ相談することが重要です。末期の歯周病
末期の歯周病は、歯槽骨が完全に溶けきり、歯が歯茎だけに支えられている状態です。この段階では、歯が自然に抜け落ちる可能性が高く、硬いものも柔らかいものもしっかりと噛むことが難しくなり、食事もしっかりと摂れなくなります。
さらに、歯周病菌が体内に侵入しやすくなり、血管障害や全身疾患のリスクが高まります。すぐにではなくても生命に関わる可能性があるため、なるべく早く抜歯を検討し、出血や膿の発生を抑える必要があります。
歯周病の主な治療法
口腔清掃指導
口腔清掃指導はTBIとも呼ばれており、歯科医師や歯科衛生士といった口腔ケアのプロが、患者さま一人ひとりの歯の状態やリスクを考慮しながら、適切なブラッシング方法を教えることです。当院では、歯のブラッシング方法、適切な歯ブラシの選び方、持ち方、力の加減、さらにはデンタルツールの使い方まで、患者さまに合わせた具体的な指導を行っております。
スケーリング
歯科医師や歯科衛生士が「スケーラー」と呼ばれる器具の先端を使用して、歯の表面に付着したバイオフィルムや歯石を除去する歯のクリーニング方法の一種です。主な目的は、歯の表面から歯石を取り除くことにより、歯周病や歯肉の炎症を緩和し、歯茎を引き締め、出血を止めることです。歯の健康を維持し、さらなる口内のトラブルを予防するために役立ちます。
PMTC
PMTCは、歯科医師や歯科衛生士などによって行われる、歯面清掃のことです。セルフケアでは難しい歯と歯の間や、奥歯の頬側にこびりついたプラークや歯石をしっかりと除去し、歯の表面をつるつるに磨き上げます。
メリットとしては、歯の表面が滑らかに仕上げられることです。これにより、次回の健診までの間に新たな汚れが付きにくくなり、口内の清潔さを保つのに役立ちます。さらに、PMTC後にフッ素塗布を行うことで、細菌の繁殖を抑え、虫歯や歯周病の予防に寄与します。歯周外科
歯周病が重症化すると、毎日の歯磨きによるセルフケアや、歯科医院でのケアでは、症状を抑えられなくなります。そういった際の治療方法として、外科的な処置を伴う歯周治療を行っています。
抜かなければならない歯も、フラップ手術や歯周組織再生療法によって、歯の寿命を維持できる可能性があります。
Treatment 歯周外科治療
- フラップ手術
歯肉のポケット部分を切開し、歯の根元にこびりついた汚れや細菌を目視で除去します。この治療によって歯周ポケットの深さが縮小し、歯周病の進行防止が期待できます。手術後は歯肉を慎重に縫合し、傷が落ち着くのを待ちます。その間、しっかりとセルフケアを行って、口内を清潔に保つことが大切です。
- リグロス
リグロスとは、溶けてしまった歯槽骨(歯を支えている骨)を再生する薬のことです。フラップ手術で露出した歯の根元に塗布すると、1年ほどの期間で歯槽骨が数mm増えますが、患者さまが治療による変化を実感することはほぼできません。また、患者さまが歯磨きをしっかりとできていないと、期待したほどの結果が得られない可能性があります。