欠損歯を放置するリスクとは? What is risk?
歯は上下合わせて32本あります。中には、1本くらい抜けても目立つところでなければ構わない……というスタンスをお持ちの方もいらっしゃるようです。しかし、歯は1本1本が役割を持っているので、たとえ1本でも抜けてしまうと、いずれはお口全体がうまく機能しなくなり、より多くの歯を失うことにもつながります。
- きちんと食べ物が噛めなくなる
- 虫歯や歯周病のリスクが上がる
- 周りの歯が動いて歯並びが悪くなる
- 顎顔面の形が変わる
- 老けて見られやすくになる
- 認知症のリスクが高くなる
- 肩こり・頭痛・腰痛の原因になる
- 発音がしにくくなる
- 残った歯が割れやすくなる
- 動作に力が入りにくくなる
歯が抜けるということは、上記のようにお口の中だけでなく、全身にまで悪影響を与えます。食べる、立つ、歩くといった基本的なことも、噛める歯があるからできることです。ご自身の将来のためにも、歯が1本抜けた段階から補う治療の大切さを、認識しておくことが大事です。
インプラントの仕組み Structure
インプラントの構造は、人工歯根(インプラント体)と支台(アバットメント)、人工歯(上部構造)の3つから成り立ちます。
アバットメント
インプラント体と上部構造をつなぐ部品です。
上部構造
インプラントの被せ物の部分です。材質はジルコニアや金属等、患者様のお口の中の状態やご希望などに合わせて作成することができます。
インプラント体
インプラントの根の部分で、顎の骨の中に埋めるものです。
インプラントと入れ歯の違い
入れ歯 | インプラント | |
見た目 | 保険適用の場合、歯に金属のバネをかけるので、 入れ歯が目立つ | 人工歯根を顎の骨に直接埋め込み、その上に人工歯を被せるので、治療部分が目立たない |
装着感 | 口内に異物を入れている感覚がある | 異物感はほとんどない |
お手入れ方法 | 入れ歯を取り外して洗浄する | 天然歯と同じように、歯磨きなどによるケアが必要 |
治療期間 | 調整期間を含めて、1カ月前後 | インプラントと骨が結合するまで、2カ月~6カ月 |
費用 | 保険適用が可能で、費用を抑えられる | 自由診療のため、費用が高額になる |
発音 | 入れ歯によっては発音が不明瞭になるケースがある | 問題なく発音ができる |
食事 | 安定性が低いため、食べる物を選ぶ。粘膜部分が覆われて、温度や味覚を感じにくくなる場合がある | 天然歯と同じようにしっかりと噛むことができ、味わって食事ができる |
インプラント手術のメリット・デメリット Merit and demerit
どんなに良い治療法であっても、患者さまのお口の状態や目指したい仕上がり、歯の治療に対する考えによっては、選択肢として合わないことがあります。当院では、インプラント手術におけるメリット・デメリットを丁寧に説明し、患者さまとしっかり話し合いを行った上で、治療の方向性を決定をしています。
メリット Merit
- 自分の歯のようにしっかり噛める
- 残った歯の位置を保ちやすい
- 隣の歯を削ったり、負荷を与えたりしない
- 天然歯と遜色がない見た目に仕上げられる
- 長期にわたって使用できる……など
デメリット Demerit
- 適用できる症例が限られる
- 治療期間が長くなるケースがある
- 噛む感覚が天然歯とは異なる
- 治療費が他と比べて高額
顎の骨の量が
足りないケースにも対応
GBR法
GB法は、Guided Bone Regeneration(骨誘導再生法)の略称で、インプラント手術を行いたい部分の骨に、幅や高さが足りない場合に行われます。骨が痩せた部分の歯茎を切開し、自家骨移植や骨補填剤などの材料を入れてメンブレン膜で遮断した上で、歯茎を縫い合わせて骨ができるのを待つのが、基本的な治療の流れです。
ソケットリフト
インプラントが上顎を突き抜けて、その先にある上顎洞へ出てしまうのを防ぐために、高さの足りない骨を補う方法が、ソケットリフトと呼ばれる治療です。人工歯根を埋入する部分の骨に穴を開けて、上顎洞を覆うシュナイダー膜を押し上げて隙間を作ります。そこに自家骨移植や骨補填剤の充填をした後に、人工歯根を入れて一定期間待つことで、足りない骨を増やし、インプラントと骨を結合させることができます。
インプラント手術の流れ Flow
カウンセリング
まずは患者さまが歯を失った原因がどんなものなのか、インプラント手術で求めていることはなにかなどを、丁寧にカウンセリングします。治療に対して疑問に思うことなどがありましたら、遠慮なくご質問ください。
精密検査
口腔環境を調べるために、歯科用CTやX線の撮影、口腔内カメラによる写真撮影などを用いた精密検査を行います。検査の結果によってはインプラント手術が合わないこともあるため、その場合は他の治療法をご案内させていただきます。
手術計画の説明
検査の結果をもとに、歯科医師がインプラント手術の計画をご提案いたします。どのような手順で手術を行うのか、いつ使えるようになるのか、インプラントを入れるにあたって必要な費用、治療期間も含めてご説明し、ご納得して頂いた上で実際の手術に進みます。
前処置
患者さまに虫歯や歯周病がある場合には、事前に治療を行う必要があります。また、顎の骨の量が少ない場合には、再生治療でインプラントを入れる土台作りを行います。手術日が近づいてきたら、口内を清潔にしておくために、クリーニングをしておくことも大切です。
埋入手術
局所麻酔を行った上で顎の骨を切削して、人工歯根を埋入します。
結合期間
埋め込んだ人工歯根と顎の骨が結合するまで待ちます。個人差はありますが、結合まで2カ月~6カ月の期間を要します。
支台部の装着
結合が確認できたら、歯肉を切開して人工歯根の上部を露出させ、人工歯を装着するための支台をはめ込みます。
人工歯(上部構造)の装着
治療部分の型取りを行い、人工歯を作製します。人工歯が完成したら一度支台に取り付けて、噛み合わせの調節や見た目の確認を行い、治療を終了します。
メンテナンス
インプラントケアを怠ると、インプラント周りの歯肉炎が起こりやすく、脱落するリスクがあります。インプラントを長く使い続けるために、治療後は定期メンテナンスを欠かさずに受けましょう。
インプラント周囲炎をご存じですか? Peri-implantitis
インプラント周囲炎とは、文字通りインプラントの周りの歯肉に炎が起こることです。歯肉の炎症が進むと、人工歯根を支えている顎の骨(歯槽骨)が溶けていき、やがてはインプラント自体が抜け落ちてしまいます。人工歯根は神経の通った歯のような免疫機能を持たないため、細菌感染に弱いという特徴があります。感染後の症状進行も早いため、天然歯が歯周病で抜けるよりもずっと早く脱落してしまいます。
インプラント周囲炎の主な症状は、歯茎の腫れ、赤み、出血、インプラントの脱落など、ほぼ歯周病と同じものが現れます。初期段階で発症に気が付くことができれば、脱落まで至ることはまずありません。時間と費用をかけて入れたインプラントを大切にするために、毎日の歯磨きと定期検診を怠らないように心掛けることが大切です。