虫歯の直接的な原因と症状 Causes and symptoms
虫歯は、特定の原因菌による酸の作用によって、歯が溶けてしまう病気です。その主な原因は、原因菌、酸、プラーク(歯垢)の3つが挙げられます。虫歯の原因菌は、糖分を取り込んで酸を算出し、歯の成分であるカルシウムやリンを溶かして虫歯を引き起こします。定期的な歯磨きや口内清掃によって細菌を減らすことが、予防の第一条件です。
また、しっかりと歯磨きができていないと、食べカスをもとに増えた口内細菌によって、白いねばねばした物質であるプラーク(歯垢)が形成されます。このプラークに含まれる大量の細菌からも酸が生み出され、歯を溶かしています。 定期的な口腔ケアを実践することで、プラークの蓄積を最小限に抑え、虫歯や歯周病のリスクを低減させることができます。
Case 主な症状
- 歯の痛み
- 歯に穴があく・欠ける
- 熱いもの・冷たいもの・甘いものがしみる
- 歯が白や褐色に変色する
- 歯が黒く変色する
- フロスなどが引っかかる
虫歯の進行と症状 Symptoms
脱灰
脱灰は、天然歯のエナメル質表面からミネラルが失われ、歯が白く濁る最初期の虫歯の状態を指します。この段階では、歯に変色以外の明らかな症状は見られず、歯を削ったり詰めたりするような治療の必要もありません。
ただし、日常の適切なセルフケアが肝要です。適切なブラッシング方法の指導や、フッ素の塗布などが、この段階で大切な治療となります。定期的な歯科検診とセルフケアの徹底によって、症状の進行を防ぎ、健康な歯を維持することが可能です。初期虫歯
エナメル質う蝕は、エナメル質の一部が褐色または黒く変色したり、欠けたりする初期の虫歯の状態を指します。エナメル質は非常に堅固であり、完全に溶けるにはまだ時間がかかります。穴の確認はできないものの、定期的に歯科医院で経過観察をする必要があります。
この段階で必要な対応策としては、歯が欠けた部分に汚れや細菌が蓄積しないよう適切なセルフケアを自宅で行い、定期的に歯科医院でのプロのケアを受けることです。セルフケアと歯科医院での治療を怠らなければ、歯を削る治療は通常必要ありません。
しかし、患者さまが口腔ケアを行うのが難しい場合や、噛み合わせに問題がある場合、また歯ぎしりや食いしばりがある場合は、欠けた部分を悪化させないために歯科用樹脂で詰める治療(CR充填)が必要となることがあります。歯の健康を保つためには、口腔状態や生活習慣に合わせて治療方法を歯科医師と相談し、選択することが大切です。中等度虫歯
中等度の虫歯、通称象牙質う蝕(ぞうげしつうしょく)は、虫歯がエナメル質を突破し、象牙質に到達した段階です。象牙質は象牙細管と呼ばれる微細な管が集まって構成されており、エナメル質よりも粗い構造を持っています。そのため、熱や冷たさが象牙質を通じて神経に伝わりやすく、歯が痛む、しみるといった症状が出やすくなります。
さらに、象牙質はエナメル質よりも虫歯の進行が速い特徴があります。虫歯の兆候に気付いたら、できるだけ早く治療を受けることが大切になります。治療としては、虫歯部分を除去し、除去した部分に詰め物や被せ物で保護をする施術を行います。重度虫歯
重度の虫歯は歯髄炎や根尖性歯周炎とも呼ばれており、虫歯が象牙質の奥深くまで進行し、歯髄と呼ばれる神経と血管の複合体に感染が及んで炎症が起こっている状態を指します。この段階では、強烈な痛みが生じ、歯を使うことがほぼ不可能となります。これらの症状が見られたら、早急に歯科医院を受診することが大切です。重度虫歯の場合、根管治療で歯髄を除去しなければならず、歯茎にも影響が出る可能性があります。
また、稀に痛みを感じないまま症状が進行し、歯髄が壊死状態になることもあります。虫歯があることは自覚症状がないため、「痛みがないから大丈夫だろう」と構えていると、歯の根の先に膿がたまり、急に激しい痛みが生じたり、膿が歯茎を腫らせたりすることがあります。この場合も、迅速な治療が必要です。
根管治療において、歯髄を取り除いた根管は細かく複雑な形状を持っており、完全な無菌状態を保つのは難しいため、症状が再発する可能性があります。再症状が発生した場合、再度根管治療を行うことが重要です。残根
残根(ざんこん)とは、虫歯によって歯茎から上の歯がほぼ溶けてしまい、歯の根だけが残っている状態を指します。この段階では、歯の根の中に細菌が繁殖しており、虫歯に感染した組織を完全に取り除くことが非常に難しく、細菌が全身へ悪影響を及ぼす可能性があるため、多くの場合で歯を抜歯することが選択されます。
ただし、全身の健康状態や他の治療法が適さない状況にある患者さまに対しては、歯の健康な部分を残し、それを土台として入れ歯を作成する方法も考慮されます。このように、患者さまの具体的な状況に応じて最適な治療方法を選択することが大切です。
痛みに配慮した治療
歯科治療には抵抗感を感じる方が多く、中でも特に注射が怖いという声がよく聞かれます。そこで、当院では患者様の不安や痛みを最小限に抑えるため、麻酔から施術まで、常に痛みの少ない治療を心がけています。 患者さまとの信頼関係を第一に考え、治療の過程でできる限り不快な思いをさせないよう努力しています。
表面麻酔
患部の歯茎の表面に「表面麻酔」を塗布して一定時間待つことにより、感覚を麻痺させる麻酔薬の一種です。針を用いない麻酔のため、特に注射器に苦手意識がある方、痛みに敏感な方には安心して治療を受けていただくことができると思います。
電動注射器
コンピュータ制御のコードレス電動麻酔器(電動麻酔注射器)の導入により、麻酔の注入に関する精密な制御ができ、痛みや不快感をできる限り軽減しています。また常に一定に麻酔を注入することができるため、途中で麻酔の効き具合が悪くなるような事態が発生するリスクがありません。
極細針の使用
麻酔注射の痛みを抑えるために、「極細の針」を使用しています。
細い針を用いることによって粘膜に刺してもほとんど刺激を感じられず、痛みによるストレスを与えない注射針です。
歯を残すための根管治療 Root canal treatment
根管治療は、虫歯が歯の神経に到達した場合に行われる治療法で、歯の根をできる限り長く保存するために行われます。この治療法は「根の治療」や「神経の治療」とも呼ばれます。根管治療においては、虫歯に侵された歯と、神経と血管からなる歯髄を取り除きますが、健康な部分は残します。この方法により、歯を抜かずに修復することが可能となります。
根管治療の鍵は、感染した組織を慎重に取り除き、無菌状態にするための消毒と洗浄、そして防腐剤を適切に詰めることです。さらに、新しい被せ物を隙間なくぴったり装着させることで、将来のトラブルを予防します。
この一連の工程を1回の治療で完璧に行えるのが理想ですが、根管内は非常に狭く複雑なため、実際には難しい場合もあります。そこで当院では、特殊な設備を活用して少ない回数で根管治療を終えられるよう努力しています。
例えば、視野を拡大して患部をハッキリと目視しながら治療ができるマイクロスコープや、根管の形状に沿ってしなることで感染した組織を削り取るニッケルチタン製のファイルの採用です。これらの方法を用いて、より治療の効率性を高め、再発リスクの低い根管治療を提供しています。